Teppei's Diaryを簡単にご紹介

研究に関係のありそうなことを淡々とまとめています

強化学習を応用した治療戦略

強化学習を医療に利用しようとする研究を2020年より、よく見かけます。

 

そんな中でもDavid SontagさんのLabは多くの面白い研究を生み出してるので、この度ご紹介します。

arxiv.org

 

強化学習を臨床的意思決定を有意に改善する可能性があるとして研究を始めたそうです。

 

しかし、ご存知のように観察データからRLを介して学習された治療方針は、研究デザインの微妙な選択に敏感だと。

 

彼らは、モデルベースのRL研究のための反復的な設計プロセスに臨床家を参加させるための簡単なアプローチである軌跡検査を強調している。モデルが予想外に積極的な治療法を推奨したり、その推奨から予想外にポジティブな結果が得られると予想している場所を特定する。次に、学習したモデルと方針を用いて、実際の病院のコースと並行してシミュレーションされた臨床の患者の動態を調べる。

 

このアプローチを敗血症管理のためのRLに関する最近の研究に適用することで、退院に向けたモデルのバイアス、サンプルサイズが小さいことと関連している可能性のある高用量のバソプレッサーを好む傾向、バソプレッサーを離脱させずに退院することへの臨床的にありえない期待を明らかにした。

 

彼らのの方法で明らかになった問題点を検出し、それに対処することを繰り返していくことで、RLポリシーが、配備の信頼性を高める結果となることを期待している。

 

ガン以外のキナーゼ阻害剤

今日の論文

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jmedchem.0c01511

 

低分子でキナーゼを狙う論文が発表されてました。

創薬とは常識となっている選択性が取れないと言われたキナーゼですが
近年、新薬がどんどん出ています

癌適応以外のキナーゼ阻害剤のレビュー論文です。

 

創薬に興味ある方は、是非とも見てほしいです。

 

Recording of elapsed time and temporal information about biological events using Cas9

面白い論文です。時間を測ることができるDNA設計です。

 

https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)00014-3

 

論文の概要
1. CRISPR-Cas9は細胞内の無傷の標的周波数を時間の経過とともに指数関数的に減衰させる
2. 経過時間は、観測されたインタクトなターゲット周波数から推定することができる
3. 複数のターゲットシーケンスを使用して、幅広い時間帯の記録が可能。生物学的事象の後の推定時間も記録することができる

 

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論文の説明
DNAはこれまで、生物学的情報の記録や数学的問題の計算に利用されてきたが、時間的な情報の記録には利用されてこなかった。

 

ここで彼らは、典型的な動的な生体反応とは対照的に、Cas9とガイドRNAによるインデル生成が定常的な速度で起こり、蓄積されたインデル頻度が時間の関数となりうることを発見しました。

 

インデル頻度を測定することにより、哺乳類細胞において数時間から数週間の絶対的な時間的期間を記録し、測定する方法を開発したそうです。

 

これらの時間記録は、Cas9の異なるプロモーターと送達ベクターを用いて、いくつかの細胞型で、培養細胞と生きたマウスの細胞の両方で実施した。応用として、化学物質への曝露時間と生物学的事象(熱曝露や炎症など)の発生からの経過時間の長さを記録したとのことです。

DeepImageJ

DeepImageJですが、なんと


ディープラーニングを用いた顕微鏡画像の画像解析を、ImageJ上で可能にするプラグイン

ここ1-2年で論文発表された最新のモデルが実装されています!すごいです

https://deepimagej.github.io/deepimagej/

Systematic Quantification of Sequence and Structural Determinants Controlling mRNA stability in Bacterial Operons

合成生物学者の誰もが、不確実性につながる設計をします。

普通とは逆の考え方です。

 

プロモーターがスワップされたり、RBSが再設計されたり、オペロン遺伝子の順番が乱れたりしたらどうなるのでしょうか?

 

共通のプロモーターのスワップは、5'UTRの変化につながる可能性がある。RBSの再設計はmRNAの構造を変化させる。遺伝子の並び順が乱れ、遺伝子間と5'UTR領域が入れ替わることで、CDSのためにmRNAの安定性/減衰(およびそれゆえ発現)が最大10倍に上昇/下降することがあります。

 

mRNAの崩壊は、いくつかのRNAsesと分解経路が同時に発生しているため、研究/モデル化/予測が困難です。また、転写や翻訳にも結合しています。

 

彼らは5つの相互作用に着目したとのこと

 

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssynbio.0c00471

CASP14について

結局、AlphaFoldは、何で世界一位を取ったか?

 

ということですが、まず、AlphaFoldには、AlphaFold1、AlphaFold2があります。

 

そしてこの

 

AlphaFold2がタンパク質の四次構造予測コンペCASP14で、2位のプロDavid Bakerに倍以上の圧倒的なスコア差をつけて優勝しました。

今回はただ優勝したというだけではないのです。

 

1年半前に優勝した時のAlphaFoldとは違い、結晶構造解析が爆速で得られている事から、実質的に今までのタンパク質構造予測問題を解決したことになります。コンペ主催者が正式に"Solution"と認定したホドです

 

何を持って構造解析を完了したかというと、創薬レベルに使えるということです。


以前のブログでも書きましたが、配列のわかっているタンパク質は約18億個ありますが、構造がわかっているのは17万しかないので、これで一気に解決する。

タンパク質の立体構造はアミノ酸配列だけから決まるが、その立体構造を予測するという問題は、取り得る構造の自由度が半端ないオーダーになります。

 

数学的に言えば、10^300 を超えるオーダーととなるため(囲碁の局面数は10^170程度なので、以後よりずっと複雑)、端から計算すると永遠に終わらないわけです。

 

しかしそれを、、

Google DeepMindは、学習に128個のTPU(Googleが開発した機械学習に特化した集積回路)を数週間使い、残基間距離でグラフ表現したものを類縁配列をアラインメントし、残基ペアの表現学習を行っただけで解決したそうです。


とはいえ、まだ論文、プログラム共に未公開です。


次の課題は、

複数のタンパク質で構成される複合体の構造予測だと思われます。

その次は、タンパク質ではなく、電子の軌道まで考慮する必要がある無機物質の構造予測かな??

 

この動画がわかりやすいので、ぜひご覧ください

www.youtube.com